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近時、手の不自由が増してきて、不満足な絵が多くなりました。
絵に対する姿勢をより自由にしたいと考えています。
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晩秋の奈良:6「薬師寺」Ⅲ [鉛筆スケッチと淡彩スケッチ]

 薬師寺、東院堂には本尊で国宝の「銅造聖観音菩薩立像」が安置されている。縁側から入り、内陣の厨子の扉は開き偉大な観音像が安置されていた。ただ、残念ながら、どこの内陣同様に薄暗く、細部を鑑賞するには光が不足していた。合掌。

 このスケッチは、東京国立博物館に展示されているレプリカを2005年に描いたもの。当然ながら光背までは装備されていない。館内に数多く展示されている仏像の中でも、一際輝いて見え、3号スケッチブックを取り出し描いた。そのときは、東院堂のあの観音像とは結びつかなかったが、さらに後、新潮社・とんぼの本「仏像の見分け方」の中に発見して、ああ、そういうことかと納得した。

  「私たちは、東院堂の北側の高い縁側で靴を脱いで、ガランとした薄暗い堂の埃だらけの床の上を、足つま立てて歩きながら、いよいよあの大きい厨子の前に立った。小僧が静かに扉をあけてくれる。--そこには「観音」が、恐らく世界に比類のない偉大な観音が立っている。 こういう作品に接した瞬間の印象は語ることのできないものである。それは肉体的にも一種のショックを与える。しかもわたくしはこの銅像を始めて見るわけではなかった。幾度見てもこの像は新しい。-中略ー 美しい荘厳な顔である。力強い雄大な肢体である。仏教美術の偉大性がここにあらわにされている。底知れぬ深みを感じさせるような何ともいえない古銅の色。その銅のつややかな肌がふっくりと盛りあがっているあの気高い胸。堂々たる左右の手。衣文につつまれた清らかな下肢。それらはまさしく人の姿に人間以上の威厳を表現したものである。-以下、略。」  岩波文庫「古寺巡礼」和辻哲郎著、よりの抜粋

 以上は、大正七年に和辻哲郎氏が東院堂の観音像を鑑賞しての感想を記したものである。このスケッチを同氏がご覧になったとすれば、一笑に付されることは簡単に想像できる。ただ、小生の感動を、貧弱な表現ではあるが、記録してみたかった。

  「今回より、文字の大きさを、ワンランク小さくしました。読みづらいと思われる方はまたお申し出ください。」

 東院堂を出て、お堂の南側に来ると、小さな紅葉が古いお堂に色を添えていた。

                    はがき大の淡彩スケッチ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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